シティーガール日誌

シティーガールな生活

犯人に告ぐ




中学3年秋ごろから卒業式前日まで。
誰かわからない人に嫌がらせをされていた。
20歳になり、成人式も終えた。いつか忘れると思っていた、のに。全く変わらない。今でもしっかりと覚えているのだ。




そういうものは突然始まる。授業が終わって下校する時、靴箱を見たらクラス中の靴がバラバラに入っていた。Aくんの右足がBちゃんの靴箱に。Bちゃんの右足はCくんの靴箱に。
くだらない誰かの悪戯だった。下校の時間、騒がしい靴箱前。誰も何も思わずに自分の靴を見つけて帰った。私も同じだった。私の靴の中にはシャープペンの芯と消しゴムが入っていた。ゴミを入れられた、と思って靴箱の上に放って帰った。




次の日。また、クラス中の靴がバラバラに。
朝に雨が降った日だった。中途半端に開いた傘の中に靴が入っていた。私の靴も誰かの傘の中に入れられていた。すぐに見つけて帰った。




別の日。靴の中に数字の書いた小さな袋が入っていた。中学3年の私は何かよくわからなかった。「変なお薬だよ、先生呼ぼうよ。」友達が言った。私は察した。薬ではない、もっといけないものだと。すぐに先生に渡した。この時こそ、私が初めてコンドームを見た時だ。





次の日から先生が靴箱周りに見回りにつくことになった。それでも終わらなかった。
液体のりがそのまま注がれていたり、得体の知れない液体が注がれていたりした。終わらなかった。



特に傷つきもしなかった。むしろ少し喜んでしまっていたのだと思う。まるで漫画のヒロインみたい、すごい。嫌がらせをされている。数少ない友達もいたし、学校も楽しかった。おまけにヒロインだ。正直、謎の優越感があった。






そう思った次の日だった。
 



靴の中には小さな紙が山盛りに入っていた。
紙を見ると沢山の悪口が書かれていた。





死ね ブス ヤリマン キモい 帰れ  





何枚も何枚も入っていた。その日、私は初めて傷ついた。一緒にいた友人に見られないように、丸めてポケットに入れた。泣くのを必死にこらえて帰った。




次の日あたりから、私だけ靴箱使用禁止になった。職員室で上履きと靴を履き替える日々だった。さすがに何もされなくなった。犯人はわからないまま、全て終わるのだと思った。





ある日。移動教室から戻ると、私の筆箱はゴミ箱に入っていた。私のイスには画鋲が置いてあった。幸い、イスに座る前に気づいた。
毎週金曜日、移動教室から帰ってくると筆箱は必ずゴミ箱の中だった。






あまりにへらへらと学校に通っていたから挙げ句の果てには先生に私が怒られた。先生たちはみんな犯人を探している。なのにどういう態度なんだ、と。最悪だった。意味がわからなかった。とにかく、気分が最悪だった。



ついには学年集会が開かれた。誰かが誰かに嫌がらせをしている。匿名で注意喚起をされた。なんとなく、終わると思った。でも終わらなかった。私はそれでも学校に行き続けた。特に凹むこともなかった。卒業式前日まで続いた。その時には誤って靴箱を使ってしまうと、帰る時には必ずゴミ箱に捨てられていた。







鮮明に覚えている。6年前のことである。
忘れてない。今でも教えてほしい。どうしてそんなことをしたのか。女か男かもわからない。
私のことがどうして嫌いだったのか、または好きだったのか。教えてほしい。謝らなくていいから。



嫌がらせは、いい経験だったと思う。
しかし、この経験は自分が思っていた以上に壮絶なものだったらしい。それを知ったのは、高校に入ってこの話を新しい友人にした時だった。





私は、忘れてないよ。ずっと忘れない。
あなたは誰なのか、いつか教えてほしい。